健康生きがい学会 第11回大会報告

1.ご挨拶
この度はご多忙中にもかかわらず、健康生きがい学会第11回大会にてご講演、ご発表、そして、分科会の座長をしていただいた皆さま、そして、ご参加いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
大会は9月11日(土)オンラインで開催され、100名近い参加者があり、「健康生きがいに満ちた“新しい暮らし方”~コロナ時代をむかえて~」というテーマについて、学術的に研究を深める場を十分に提供することができたものと思っております。
参加者の皆様より「記念講演がたいへん参考になりました」「ひじょうに内容の濃い分科会でした」など、おおむね好評のお言葉を頂戴いたしました。
これもひとえに皆様方から頂きました絶大なるご協力の賜物と心より感謝とお礼を申し上げます。

2.ごあいさつ 辻 哲夫 健康生きがい学会会長
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3.記念講演 新田 國夫
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4.分科会報告(総括)
第1分科会:フレイル予防と健康生きがい
座長:神谷哲朗(東京大学高齢社会総合研究機構学術支援専門職員)
発表者:若松⾹奈⼦(国⽴市⾼齢者⽀援課)、渡澤公一(逗子市社会福祉課)、中川隆(逗⼦市フレイルサポーター)、喜納啓一(沖縄県北中城村福祉課)
1)国⽴市⾼齢者⽀援課若松⾹奈⼦様から「国立市フレイル予防で健康づくり生きがいづくり」のテーマでお話を頂きました。国立市の概況に続いて、地域包括ケアに向けた行政の取組み、2017年から市民が主体的に取り組むフレイルチェック事業並びにフレイル予防に向けた取り組みについて詳細な発表を頂きました。フレイルチェック会、ハイリスクアセスメント会議、アプローチ、次回目標の設定の循環的な取り組みを進めている。しかしコロナ禍で、活動が厳しくなってきたことと、市民にもマイナスの変化が起きてきた。コロナ禍でも市民間のつながりを進める活動(郵便の活用、地域活動支援、講座の継続支援等)を進めてきている。それに続いて、4名のフレイルサポーターの皆様からのフレイル予防に向けて強いメッセージが伝えられ、多くの方々の心に響きました。
2)逗⼦市社会福祉課の渡澤公一様からは「逗子市のフレイル予防とフレイルサポーターの活躍」についてお話頂きました。逗子市が神奈川県下、介護認定率等、大変厳しい中でフレイル予防へ取組むきっかけとその背景についてのお話に続き、フレイルチェック活動の充実化に向けて3つの部会(測定部会、勉強部会、広報部会)を設け、サポーター集会、部会、連絡を通して活動が行われている状況についてお話され、しかしやはりコロナ禍での取り組みが厳しく実働人数も18名と半数となってきており、今後の学び直し、新たなサポーターの活躍方法の検討が必要であることをお話されました。続いて、フレイルサポーターリーダーである中川隆様より、これまでの活動経緯、健康長寿、社会参加の実践(自分事)、仲間づくりの工夫に向けて熱いメッセージが発せられた。特に役目を引き受けると役割は増える、人との縁が広まる(心の豊かさ)からこころの健康に→健康生きがい・・・自分の為のお話は印象深いお話でありました。
3)長年健康寿命日本一に輝く沖縄県北中城村福祉課の喜納啓一様からは、「コロナ時代の健康生きがいづくり」のテーマでお話頂きました。100歳長寿を祝う伝統的な「カジマヤー祝い」、「トーカチ祝い」のご紹介、また「美寿きたなかぐすく」の活動を通しての健康づくり、男性陣の花咲か爺の活動などから、北中城村の長寿高齢者の生活状況から見えてくるキーワードに食と運動、社会参加が充実していることを話されました。その様な中で改めて北中城村では総合事業の一環でフレイル予防を導入し、実施してきた結果、介護認定率、介護保険料の抑制が年次的に低下してきており成果がでてきているという素晴らしい結果のご発表でした。コロナ禍での取り組みには限界があるけれども、社会参加を推進することが必要で、フレイルチェック事業の拡充を通してこの課題に取り組む姿勢を話されました。最後にイギリスBBC放送で放映された長寿北中城村の映像にあわせて高齢者の生きがいづくりが健康にいかに重要であるかということを話され、本学会にとっても大変参考になるお話を頂くことができました。

第2分科会:子どもと健康生きがい
座長:米田佐知子(子どもの未来サポートオフィス代表)
子ども若者がどのように社会参加・参画をして自立(自律)していくのか、3つの報告から議論した。
人口2万人の岐阜県笠松町で行われている子どものまちの実践は、大人とのやりとりの中で生まれがちな子どもの枠を崩し、子どもが自分の力に気づく主権者教育の要素を持っていた。
若年層は6割が社会貢献意欲をもっているが行動するのは2割となる。神奈川大学での社会参画力育成を意図した体験型授業では、潜在的ボランティア層のとまどいに対し、シニア等の他者との出会いや体験の機会を提供している。
千葉県の福祉専門学校では、主体的進路選択ができなかった経済的困難を抱える学生増に対し、現場実習で体験と自己覚知を生み、その成長から職業の主体的再選択につながっている。
若者の社会参加は、担い手不足の観点で語られることが多い。しかし、子どもの主体的な参加・参画・選択の機会を奪ってきたのは、私たち大人や経済困窮等を生み出している社会構造である。その認識に基づいて取り組む必要があると感じられた。

第3分科会:地域共生と健康生きがい
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座長:松山博光(大妻女子大学人間関係学部教授)
本分科会は、3報告であった。これらの特徴は、国連が掲げたSDGs(持続可能な開発目標)を促進させる実践事例であった。とは言え、近年、コロナ禍の状況下の中でいかに参加者を集めるか大変苦慮していた。
市野氏の報告は、和歌山県の「居場所サロン」を拠点に多世代の人々が一緒になって活動しながら、生き生きとした健康的な生活を確保して、地域住民の福祉を推進させる活動であり、ここちよい健康と生きがいに貢献する参考事例であった。
寺田氏の報告は、1965年から都市開発されてきた日本最大規模のニュータウンにおいて、高齢化が進む多摩市内の「福祉亭」を拠点に多世代が継続的に交流し、「共生」できる実践事例を紹介した。
平野氏の報告は、住民の絆が強い沖縄県民と大学との連携を通じて、「学内ミニデイ」という斬新な取り組みを紹介し、今後の「地域共創・未来共創」の街づくりに役立つ内容であった。

第4分科会:障がい者の暮らしと健康生きがい
座長:君島淳二(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会常務理事)
発表者(発表順) 相馬宏昭、西澤達夫、松崎良美
当日の進行:座長より開始の挨拶。以降、順次3人の発表者によるプレゼンテーションを20分ずつ、その後、聴取者(WEBによる参加者)からの質問をチャットにて受付、順次発表者より回答し、最後に再び3人の発表者によりテーマである「障がい者の暮らしと
健康生きがい」についての見解を述べることとした。結果的に参加者からの質問は皆無だったため座長による代表質問とした。
(発表概要)
相馬氏:自身の勤務するNPO法人ぱれっとを職員とともに支えるボランティア人材に焦点をあて、彼らとともに法人の支援対象である障害者も成長(生きがいを持つ)していくとした。スリランカに現地の知的障害者のための働く場所としてお菓子工場を建設、運営、生きがい創出を実践する(ビデオ上映)が、その創設にあたっても現地に赴くなど欠くことのできない存在となったのは、リタイアした人、学生などのボランティアたちであった。
質問:ボランティア募集の方法は。→ホームページによる、「たまり場」活動など常に地元密着しており、若手の参加も多い。
西澤氏: 文字を音声化し任意の速度で読み上げ、画面上ではその文字に色づけ(マーカー)を施されたデジタル化された書籍は読みに困難のある子どもたちの教育に効果がある。その書籍の製作に指先しか動かない筋萎縮性側索硬化症(ALS)など重度障害者が参加しているが、指先に力がなくクリックが難しい。マウス機能をさわる、ふれる、うごかす(ワンキーマウス)ことによって同じような動作が可能な新たな機器を開発、実物の実演を交えて説明を行った。
質問:相当重い方が参加しているということか。→ほぼ寝たきりと考えてよい。今は会えない状況なのでWEBにより使い方のレクチャーをしているが支障なく、生きがいにつながっているとのコメントをもらっている。
松崎氏:コロナ渦は特別支援学校の生徒たちから学ぶ機会を奪った。単に中断されたと考えるのではなく「危機」として捉えることが重要。学びの中断は生きがいの喪失につながる。教育を受けたいは単に消費者にすぎない、学びたいは主体性の表れであり、学ぶことは主体性を築くことでもある。GIGA構想、ICTの活用が進むことになったが、それで代替されるとするのは学びの本質を損なう可能性がある。「まなキキプロジェクト」はホームページを開設し、さまざまな学びの危機に警鐘をならしている。
質問:なぜ機械化ではだめなのか。→知識の伝達はできるが、好奇心や興味といった生徒からの発信を受け止められない。成績のための学びではなく、人として成長することが学びの目的、先生と生徒の関係性だけにしてしまっては危機が深まる。

5.全大会
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〇健康生きがい学会第11回大会プログラムの販売(1,000円:送料込み)
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